カメ男が目を覚ましたのは、夜の8時だった。
先にご飯を食べ終えていた私は、勝手にテレビをつけてバラエティ番組を楽しんでいたところだった。
くだらないコメントをする芸人にいちいち爆笑していると、不意に「梢」と声をかけられて、ヤツが目を覚ましたことに気がついたのだった。
「あ、起きた?」
「うん」
コクンとうなずいて体を起こしたカメ男は、枕がいつものと違うことをすぐに指摘する。
「これ……どうしたの?」
「買ってきたの。あと、体温計も」
まだ箱から出してもいない体温計をヤツに見せてから、
「ねぇ、ご飯は食べれそう?一応、うどんは作っておいたんだけど。食欲無いならヨーグルトとかゼリー買ってくるよ」
と聞いてみた。
「お腹空いた。うどん食べる」
「そう?じゃあ準備するね」
キッチンのコンロでうどんを温めている間に、まだボーッとベッドに腰かけているカメ男へペットボトルのポカリスエットを渡す。
「水分補給!熱がある時は1番大事だから、いっぱい飲んでね。あと2本買ってきてあるから、冷蔵庫に入れてあるよ。足りなくなりそうな時はまた買いに行くし」
「……分かった」
「あと、病院でもらった薬は食後に飲まないといけないから、水と一緒にここに置いておくね」
テーブルの上に天然水のラベルが貼られたペットボトルと、薬の袋を置く。
忙しなく動き回る私の姿を、ヤツはただただぼんやりと眺めているだけだった。



