━━━━━その後。
カメ男は私に運転席を譲ってくれず。
ヤツの運転で引き返し、近くの病院を受診することとなった。
夏風邪を引く人って案外多いのか病院では2時間も待たされてしまい、その間にカメ男はすっかり体調が悪化し、病院から出てきた頃にはぐったりしていた。
動けなくなったヤツの代わりに調剤薬局まで走って薬を受け取り、そして結局ペーパードライバー歴5年(と言っても最後に運転したのも10分くらいの短い距離で、しかも地元の田んぼ道)の私が車を運転し、ヤツのアパートまでたどり着いた。
部屋に着いてすぐに、カメ男は何も言わずにドサッとベッドへ寝転がり、そこから動かなくなった。
ものの数秒で眠りについたらしい。
相当無理してたんだなぁ、とヤツの寝顔を見ながらそう思った。
そして、そっと黒縁メガネを両手で持って、ヤツの顔から引き抜くように外してサイドボードへ畳んで置いた。
「おやすみなさ~い」
返事がないのは分かっていて、あえて声をかける。
蒸し暑い部屋にエアコンを入れて、体が冷えても良くないから横たわるカメ男にタオルケットをかけた。
病院で測った時のヤツの体温は38.9度だった。
どうせカメ男は体温計とか、氷枕とか、そういう類のものを持っていないだろう。
これを機に買い揃えた方がいいと思って、ヤツのアパートを出た。
歩いて15分ほどの大型スーパーで3日分の食料と飲み物を、隣接する薬局で体温計などを買って、アパートに戻った私はヤツの様子を伺ってみる。
変わりなく眠っているようだったので買ってきた氷枕に氷水を入れて、爆睡するヤツの頭の下へ無理やりねじ込んだ。



