ウサギとカメの物語 2



ソフトクリームを食べ終わらないうちに、カメ男がトイレから出て私の元へやって来た。


なんとなく、ヤツの表情が浮かない。
私と違って常にテンションは低めだけど、今日はそれに輪をかけてるというか。
冷たいとか、素っ気ないとか、そういうことじゃなくて。
元気が無いような気がした。
……いや、いっつも元気なんて無いんだけどさ。


「ねぇ、柊平?」

「ん?」

「どうかしたの?」


もはや溶けかかって、指にソフトクリームのダレた液体が絡まってくる。
でもそれは気にせずにヤツに言葉を続けた。


「なんか……いつもと違う感じ」

「いや。同じ」

「違うなぁ~」

「同じ」


にじり寄る私と、逃げるカメ男。
炎天下の下で何をやってるんだ、と誰かに突っ込んでいただきたいくらいだ。


あと少し残っていたソフトクリーム(またの名を液体)をパクッとひと口で食べた私は、逃げようとするヤツの腕を捕まえて空いてる方の手を背伸びして額へ伸ばす。


少しだけ触れた。


すぐに顔を背けたヤツの横顔を、私は目を細めて見つめた。


「………………熱、あるんだね」

「……………………………………平熱」

「嘘。熱かったもん」

「気温のせい」


この後に及んで何を言い訳してるのか、カメ男!
無理して旅行へ行こうだなんて、それはいくらなんでも私だって鬼じゃないんだから、キャンセルしたって怒らないのに。