「予約が取れた旅館の夕食がね、部屋食なの!それで、A5ランクの黒毛和牛のすきやきが2000円の追加料金で食べられるっていうから頼んじゃったよ~!日本酒も色々揃えられてるみたいだし、夕食で余ったご飯はあとで夜食としておにぎりにしてくれるんだってよ!?凄くない!?あとねあとね、女性客は浴衣が選べるんだって~!全部で50種類あって、廊下ですれ違っても自分と同じ浴衣の人はいないように配慮されてるみたいなの!何色の浴衣着ようかな~!何色が似合うと思う?あ、男性用は残念ながら一種類しか無いみたいだから、とりあえずでっかいサイズの用意しといてもらうように言っといたから!2日目は近くの弥彦山に行ってロープウェイで………………。ねぇ、柊平!聞いてる!?ねぇったら」
私のマシンガントークを全身に浴びたカメ男が、遠い目をしながらコクコクうなずくのが見える。
一応聞いてはいたらしい。
「白か水色」
と、それだけつぶやいた。
「なにが?」
「浴衣」
「……聞いてたんだ?」
「聞いてました」
心なしかうんざりしてるようにも見える顔で、ヤツはちゃんと私の質問には答えてくれた。
「楽しみだねぇ~」
カメ男の部屋で、ベッドに座って。
まったりとヤツにもたれかかる。
そのままの状態で、私が読み込んだ旅行雑誌に視線を落としながらカメ男が聞いてきた。
「温泉は?露天もあるの?」
「あるよ~」
「部屋には?」
「あるよ~」
「一緒に入る?」
ガバッと体を起こして、ヤツの横顔をまじまじと見つめる。
カメ男のヤツめ、目だけを私に向けてふざけたように口元に笑みを浮かべていた。
ちっくしょー!
私の反応を楽しむために聞いてきたな!
「入らない!絶対に入らない!1人で入る!」
「ふーん」
「ふーん、ってなによ!バカにしてるでしょ!」
「ううん」
短い返事しかしてこないカメ男にイラついて、顔面に枕を投げてやった。
ほんのちょっと、ほんっっとーーーにほんのちょっとだけど、お風呂に一緒に入ってやってもいいぞ~って思いながら。



