ウサギとカメの物語 2



奈々がすすめてくれた新潟県の弥彦温泉を細かく調べて旅館を何件かピックアップした私は、予約いっぱいと断られる前提でどんどん電話していった。


すると、奇跡的に前日にひと部屋だけキャンセルが出たという旅館に当たり、「やったぁ~!」と両手を上げて万歳したいのを我慢して予約を取った。


そしてそれを興奮気味にカメ男に報告すると、ヤツは大したリアクションもせずに


「良かったね」


と、まるで他人事のように感想を述べるのだった。


「ねぇ、あまりにも冷たくない!?」

「ものすごく感動してるよ」

「心がこもってない!」


不満たっぷりの私に、ヤツはどこかにセリフが用意されてるんじゃないかと思うほど棒読みで言葉を続ける。


「でもこれで旅行に行く目処が立ったんだからひと安心でしょ」

「………………当日は休憩無しでぶっ続けで運転してもらいますからね」


夏休みシーズンで道路は混んでいるだろうから、きっと車での移動は4時間近く、いやもしかしたらそれ以上かかるかもしれない。
こうなったらヤツには疲れ果てるまで運転して働いてもらうんだから~。


カメ男が言うには、運転すること自体は嫌いじゃないらしく。
でも通勤は電車だし、休みの日に遠出するわけでもないので、車の出番は荷物の多い買い物の時くらいだという。
なので、必然的にヤツの車に乗ったのは数回ほどしか無い。


普段、歩くスピードが恐ろしく人よりも遅いカメ男だから、運転する車ものろのろ走らせるのかと思いきやそれはそうではなかった。
適度に周囲の車のスピードに合わせて走るし、運転技術としては非常に優秀な方ではないかと思った。


まぁ、私はたいてい助手席に乗ると眠くなっちゃうから、目的地に着いた頃に起こされるパターンが多いんだけど。