ウサギとカメの物語 2



私とカメ男が旅行に行くなんて付き合ってから初めてのことだから、たぶん相当なウキウキ感が顔から体中から溢れ出ていたんだと思う。


旅行雑誌を買ってみたり、ネットで調べてみたり、温泉ついでに観光地も巡りたいし。
2人で行きたいところが山ほどあって、計画を練るだけでも楽しかった。


そのウキウキ感をガッツリ感じ取ったカンの鋭い真野さんを筆頭に、奈々や優くんにも「随分楽しそうだね~」ってニヤニヤされた。


お昼休み。
ランチを食べにベトナム料理屋に来ている中で、向かい側に座る奈々と優くんに雑誌を見てもらいながら悩みを打ち明けた。


「最初は那須高原がいいと思ったんだけど、塩原温泉は全滅で……。鬼怒川温泉もどこも満室。山形の上山温泉もダメ。福島の飯坂温泉も全滅。どうしよ~……」

「作並は?」

「県内じゃ面白くないっ!」


優くんの提案を1秒ではねつけた私は、フォーの麺をすすりつつ息をついた。


「やっぱり夏休みシーズンだからほとんど予約いっぱいなんだよねぇ……」


私や奈々よりよっぽど上品な食べ方でフォーを頬張る優くんは、雑誌をパラパラめくりながら親身になって顔をしかめてくれた。


「部屋に温泉ついてた方がいいよね?もしくは家族風呂があるところとか。2人で入るよね?」

「は、入らないよっ!バカじゃないのっ!」

「え~!じゃあ何のために温泉行くのさ」

「リフレッシュ以外無いでしょーが!」


何を言い出すか、このバイ野郎!
そんな小っ恥ずかしいことカメ男と出来るもんか!


私と優くんがやいのやいの言い合っていると、奈々が旅行雑誌を眺めながら会話に冷静に入ってきた。


「新潟は?前に順と弥彦温泉行ったけど、なかなか良かったよ。近くに山があって、ロープウェイで登れて景色とか見下ろせたから楽しかったし」

「ほぉ~、弥彦温泉?」


新潟まで足を伸ばすことは考えてなかったな。
奈々が真っ当な意見を述べてくれて、私は急いで携帯で弥彦温泉を検索した。