ウサギとカメの物語 2



私の会社にはお盆休みは無い。
とは言え、8月の間に特別休暇と称した夏休みを3日間だけもらえるのだ。


事務課ではみんなで相談し合ってそれぞれ休みをずらしながら取るんだけど、私たちの関係を知る真野さんが気を利かせてくれて、私とカメ男は同じ日程で夏休みをもらうことが出来たのだ。


こういう時、真野さんに知られてて良かったなぁと思う。


「温泉行きたい!でも、お金は私も出せるから大丈夫。ボーナスももらったし、一応毎月ちゃんと貯めてるし」


私がそう言うと、カメ男は「そう」とそれ以上旅費については何も言ってこなかった。
その代わりと言っちゃなんだけど。


「どこに行くか、梢が決めていいよ。任せる」


旅行は提案したものの旅行プランは丸投げ状態で、ヤツは私に「よろしくね」と微笑むのだった。
要するに、色々調べて予約の電話をするのが面倒くさいだけなんだろう。


だけど世の中って不思議なもので。
ちゃんと歯車が噛み合うように出来ているのかな。
面倒くさがりと面倒くさがりが付き合うことってあるのか分かんないんだけど、少なくとも私は旅行の計画を立てたり、予約を入れるという作業がそんなに苦ではなくて。
カメ男のそういうところは、私がきっちりカバー出来るということをこの時初めて知った。


「リゾート地に行きたいって言われなくて良かった~」


ついつい口から漏れてしまった本音。
カメ男が訝しげにそれを拾い上げて、不思議がっていた。
「なんで?」って。


まさか「貧乳だから水着を着たくない」というしょーもない理由を聞かせるわけにもいかず、


「日焼けしたくないの。それだけ!」


と、苦笑いを返した。