私のアパートにヤツが泊まりに来たこともあるんだけど、いかんせん狭いワンルームの部屋なので。
必然的に1DKで部屋が広いカメ男のアパートに泊まることが多くなっている現状だ。
「置物の話は置いといてさ、違う話しない?」
「そっちが振ったくせに」
話題を即座に切り替えた私の速さについてこれず、カメ男は呆れたような声を上げて恨めしそうにこちらを睨んだ。
眠いのに話しかけられて無理やり起こされ、ただでさえ気分を害しているみたいだ。
「だってさ、今日の夕方はビックリしたんだもん」
言いながらグリグリとヤツの肩に頭を押しつけると、何をして欲しいのか察したらしく腕を出してきてくれたので私はそこへ頭を下ろす。
カメ男の腕枕は最高の寝心地で、ヤツからしてみれば腕が痺れて痛いみたいなんだけど、そういう抗議は一切聞かないことにしている。
腕枕の体勢が整ったあと、カメ男が思い出したように「あぁ」とつぶやいた。
「熊谷課長の結婚話のことね」
「うん、そう。やっぱり彼女いたんだなぁ、って思ったの」
「デキ婚らしいよ」
「えっ、そうなの!?」
飛び起きようかと思うほど驚く私とは対照的に、カメ男は恐ろしく落ち着いていて。
ボーッとした顔で眠気と戦いながらうなずいていた。
「相手は社外の関係ない人みたいだけど」
「どこ情報?」
「順」
あぁ、田嶋順ね。
営業課なら熊谷課長とも近い関係だし、そのへんの詳しい話を聞いていてもおかしくはない。
それにしてもデキ婚て。
もともと節操無いな、とは思ってたけど。



