ウサギとカメの物語 2



「なーんだぁ~。つまらんっ!」


あからさまにガッカリしたような顔でこれ見よがしにため息をついたさやかは、一応興味は消えていない様子で質問を重ねてきた。


「年は?どこで出会ったの?」

「29歳。職場」

「へぇ~!社内恋愛か!どんな人なの?」

「物静かで置物みたいな感じ」

「…………………………置物?」

「うん。歩くのがめちゃくちゃ遅くて、酒飲みで。特徴と言えばメガネかけてるくらい。あと、趣味はボルダリング 」

「………………そういう人とどんな会話すんのよ」

「基本的に私がずっとしゃべってる」

「……………………梢、それで幸せなの?」

「うん、幸せ」


ポンポン弾んだ会話の、私の最後の一言でさやかが手を叩いて爆笑したもんだから解せない。
なんにも面白いこと言ってないぞ、私。


いまだにカメ男については分かんない時が多々あるんだけど。
それをひっくるめて好きなんだよねぇ。


「彼氏もうすぐ30歳でしょ?結婚の話は出てないの?」


さやかの何気ないその問いかけを聞いて、今度は私が手を叩いて爆笑した。


「出るわけないでしょ~!まだ付き合って8ヶ月だよ?早すぎでしょ!」

「早くないよ。由香なんて半年でプロポーズされたんだよ?」

「…………………………え?そうなの?」


確かに由香から結婚の知らせを聞いた時は、「あれ?彼氏いたんだっけ?いつの間に!」くらいな感想は持ったけれど。
まさか交際半年で結婚が決まったとは知らなかった。


「もう私たちくらいの年になると、付き合った期間とか関係ないと思うんだよね~。結婚って、要はタイミングじゃない?由香だって長年付き合った彼氏と別れて、今の人と巡り合ったわけだし」


一体どこのコメンテーターだ、というツッコミを入れたいくらいにスラスラと話すさやかの言葉を、私はまるまる飲み込んだ。




もっしもっしカメよ、カメさんよ~。
結婚って、考えてますか~?


そんなことを初めて思ったのだった。