何故私がいきなり結婚願望を抱き始めたのかと言うと、それには理由があった。
ことの始まりはつい先週参列した、地元の友達の結婚式だった。





市内にあるホテルの結婚式場でおこなわれた、由香の結婚式。
同じくとても仲のいいさやかと参列していたのだけれど。


さやかに会うのは実に久しぶりで、去年の年末に一緒に消防士との合コンに行く予定だったのを私がドタキャンしてしまったがために、1年以上空いての再会だった。


会って開口一番、彼女はニヤリと笑みを浮かべて私にこう言ったのだ。


「どれ、あんたの彼氏の写真でも拝ませてもらおうかな!」

「………………はい?」


今日は由香の結婚式だっつーのに何言ってんだ、さやかさんよぉ~!


私の気持ちは全部顔に出ていたらしく、式場の広いロビーでさやかは楽しそうに笑っていた。


「消防士との合コンをドタキャンしてまで選んだ男でしょ~?どんなイケメンかと思ってさ!」


ヤバい。
ヤバいぞ、この展開は。
幼い頃からずーっとかっこいい人にきゃあきゃあ言い続けてきた私を知っているからこそ、さやかは大きすぎる期待を抱いているぞ。


「残念なことに写真はありませぬ。そしてイケメンでもありませぬ」


期待には応えられませぬ、と付け加えてさやかの申し出を突っぱねた。