「ご祝儀貧乏?」


行きつけである駅裏の居酒屋「酔いどれ都」で、カメ男が私に聞き返してきた。


週末で明日は仕事も休みということもあり、私たちは2人で美味しいお酒と料理を堪能しに来ていた。


少し濃いめに味付けされた肉じゃがをパクパク食べるカメ男を横目に、私はいたたまれない気持ちになりながらガックーンと肩を落とす。


「うん。その名の通りです、はい」

「なんでそんなに結婚式ばっかり呼ばれるの?」

「友達が多いってことなんだよね、たぶん……」


自慢じゃないけどこの明るい性格がゆえに友達は多い方だ。
飲み会の誘いもあとを絶たないし、休日だって遊ぼうランチしようお茶しようと様々な友達から誘われる。


今年呼ばれた結婚式のうち2つは県外だったため、交通費も宿泊代もかかった。
一応少しは交通費として友達から頂くんだけど、どちらにせよ大幅な赤字には変わりない。


「それにさ。結婚式っていうと女は男よりお金がかかるのよ。美容室に行って髪の毛をセットしてもらったりするし」


私がゴチャゴチャつぶやいていると、納得していないような顔でカメ男が眉を寄せた。


「髪の毛下ろしていけば?」

「それは礼儀としてダメなの!」

「ふーん。よく分からない」

「………………」


こいつに愚痴った私がバカだった。
愚痴というか、ボヤいただけなんだけどさ。
友達の結婚式はおめでたいことだし、幸せのお裾分けだってしてもらえるし、お酒も飲めるしいいことづくしではある。


だけど。
だけどね?


私ももう今年の12月で28歳になる。
結婚適齢期だと思いませんか、カメ男さん!


その言葉は、どうにかこうにかグッと堪えて口にはしなかった。