確かに、今にして思えば優くんの言動や行動には男と女が混在していたように思う。
女の子みたいにオシャレなランチを楽しんだり、恋話を聞きたがったり。
かと思えば、幼稚園の先生が相手という合コンに行こうとしていたり。
ここに来て思い当たる節が浮上する。
「なぁ、梢……」
優くんは改まったようにイスに座り直し、私の表情を探るように尋ねてきた。
「俺さ、気持ちを伝えて吹っ切れたんだ。また次の恋を探す!だから、こんな俺だけど親友になってもらえないかなぁ!?梢となら気を使わないで話せるんだ!」
そんな不安そうな顔しないでよ。
捨てられた子犬みたいな顔。
優くんは笑顔が一番素敵なのに。
私は力強くうなずいて見せた。
「当たり前でしょ?ゲイだろーがバイだろーがそんなの大した問題じゃない!」
「ゲイじゃないってば」
「あはは、ごめん」
すっかり和気あいあいモードに突入した私と優くんを横目に、ようやくカメ男の再生ボタンが押されたらしく、ヤツは持っていたコーヒーカップをテーブルに置いた。
ヤツの曇っていたメガネはすっかり消え去り、奥二重の細い目がしっかり見えた。
その目には衝撃が残ったままだった。
「高槻。俺は……その……」
「ダメ!それ以上言わないで!もう柊平の気持ちは分かってるつもりだし、この2週間で吹っ切ったから!」
若干おネエ系の口調でイヤイヤと拒否した優くんは、ニコッと笑って肩をすくめた。
「柊平んちにお泊まり出来たのは、一生の思い出だよ!……あ、大丈夫。襲ったりしてないからね!キスもしてないし!」
「……………………ありがとう」
魂を抜かれたように掠れた声でカメ男が返事をしたもんだから、私と優くんは大爆笑してしまった。
ヤツがブルッと身震いしたのを、私は見逃さなかった。