ウサギとカメの物語 2



「驚かせたよな。でも、これが俺の本当の気持ち。本当の姿なんだ」


優くんは「言ってやったぞ!」という言葉が相応しいほどにスッキリした表情で私たちに笑いかけてきた。


キャパオーバーして動かなくなったカメ男の横で、どうにか言葉を発しなくてはという思いから絞り出す。


「ゲ、ゲイ……ってこと?」

「ううん、バイ」

「バイ!?」


バイって、男も女も両方とも恋愛対象の人のことをいうんだよね?


目の前にいる社内でも話題のイケメン事務員がまさかのバイだなんて、誰が予想出来ただろうか?


それと同時に、私に想いを寄せてるんだと勘違いしていた自分が滑稽で。
もうこの場で笑い飛ばしちゃいたいくらい、面白すぎる勘違いだった。


「会った時から柊平のことは好みだなーって思ってたんだ。いや、むしろ一目惚れに近かった。で、梢は親友になれそうだなーって感じてた」


一時停止中のカメ男を差し置いて、優くんが再び語り出す。


「梢と柊平は同期だし仲も良さそうだったから、梢に相談しちゃおうかって思ったりして……。きっと梢なら、俺がバイだって知っても引かないで理解しようとしてくれるって思ったから」

「そ、そりゃまぁ……。恋愛観は人それだからね」


短大時代のクラスメイトに実際にバイの女の子がいたのを思い出した。
だからあまり抵抗は感じない。


でも。でもさ。
まさかだよね、いくらなんでも。
これだけ男として魅力的な顔立ちをしていて、明るくて気さくだから。
想像もつかなかった。