当の本人のカメ男はというと、いまだにコーヒーにフーフーと息を吹きかけていて、メガネは白く曇ったまま。
まさか自分が優くんの熱い視線を浴びているなんて夢にも思っていないんだろう。
私が肘でヤツの腕を小突いて、ようやくカメ男は「え?」とコーヒーを冷ますのをやめた。
「柊平!好きだ!!」
優くんのハッキリとした声が私の耳に聞こえた。
もちろん、それはカメ男の耳にも届いてるはずで。
そうなのだ。
優くんの好きな人は、私なんかじゃなくて。
私の恋人の須和柊平だったのだ。
カメ男はコーヒーカップを右手に持ったまま、ピクリとも動かなかった。
ヤツの顔を覗き込むと、目を見開いているというわけでもなく、口も開いておらず。
ドラマとか映画とかのDVDをリモコンで一時停止にしたように、1ミリたりとも動かなかったのだ。
たぶん、これは。
カメ男の最大級の驚きを表す行動なのだ。
状況を把握するために、脳をフル稼働させるから体は動かなくなるような、そんな感じだろうか。
ちなみに、この時ばかりは私だってどう反応していいのか分からなくて。
ビックリしすぎて、頭を整理するだけで精一杯だった。



