やがて程なくしてカメ男が現れた。
ヤツは店内をキョロキョロと私たちを探しているようだったので、優くんが手を振って位置を知らせる。
私たちを見つけたカメ男はカウンターでコーヒーを注文し、すぐにそれを持ってテーブルまでやって来た。
「遅くなってごめん」
カメ男はそう言って、私の隣のイスに腰かける。
優くんはニッコリといつものように笑みを浮かべて、「気にしてないよ」とつぶやいた。
早速、熱々のコーヒーを飲もうとしてカメ男がフーフー冷ます作業に取りかかっている。
そのせいでヤツのメガネは湯気で真っ白になった。
「この2週間、悩みに悩んで出した結論を2人に聞いてほしくて呼び出したんだ」
おもむろに話し出した優くんの言葉に耳を傾けるべく身を乗り出す私。
その隣で、カメ男はまだフーフーとコーヒーを冷ましている。
「梢と柊平が付き合ってるって聞いて、俺……ほんとにビックリした。てっきり2人とも社外に恋人がいるんだと思ってたからさ」
「嘘ついててゴメン」
「ううん。それはいいんだ」
スポーツマンタイプの超イケメンと付き合ってるなんてでまかせを言った手前、さすがにカメ男はどこも当てはまらないので優くんに謝ったものの、彼はすぐに首を振った。
問題はそこじゃない、とばかりに。
「ちゃんと潔く諦める!諦めるから、このどうしようもなく好きな気持ちを伝えたくて!」
テーブルの上に乗せた両手をグッと握り締め、優くんがその整った顔を上げる。
この時の私の胸はドキドキが最高潮で、「優くんの気持ちには応えられない!」ってドラマみたいなありきたりなセリフさえも脳内で用意していた。
ところが。
ところが、だ。
優くんが見つめていたのは私じゃなくて、私の隣にいるカメ男だった。
須和柊平を、一心に見つめていたのだ。



