優くんがパッタリと私とカメ男の名前を呼ばなくなったことは、当たり前だけど奈々が真っ先に気づいた。
「もしかしてほんとに須和が優くんにガツンと言っちゃったわけ!?」
と、並々ならぬ期待を寄せてくれたけれども。
そうじゃない、と即座に否定した。
付き合っていることを伝えただけ。
それだけで、優くんは私たちに寄りつかなくなってしまったのだ。
気を使ってくれているんだろうけど、時々どこか落ち込んだような顔をしている優くんを見るだけで心が痛んだ。
カメ男には「あんまり気にしなくていいんじゃない」と言われたけど。
それが出来たら世話ないよね……。
こればっかりは私の性分だから。
5月になり、明日からゴールデンウィーク突入というある日のことだった。
仕事を終えたので事務課のみんなに挨拶をして席を立ち、事務所を出たところで優くんが私を追いかけてきたのだ。
「梢!梢~!」
久しぶりに名前を呼ばれたような気がして、ほんのり嬉しくなりながら「どうしたの?」と聞いてみる。
なるべくいつも通りに接しようと心がけながら。
「あのさ、ちょっと……話したいことがあるんだ」
「あ…………、うん」
「もし良かったら、帰りに少し時間くれないかな」
いつになく真剣な表情の優くんに、ドキッとしてしまいそうになったりして。
話したいことって、なんだろう。
告白とか?
振られるのを覚悟で告白なんて優くんは凄すぎるな、と思う。
彼のまっすぐな性格が羨ましいとさえ感じてしまった。
「柊平も誘ってあるから。外で待ってるね」
優くんが言ったその言葉に、思わず「え!?」と聞き返したけれど。
彼は聞こえたのか聞こえなかったのか、何も答えずに「あとでね」と微笑んで行ってしまった。



