「そこにいる大野と待ち合わせ」と言われた優くんは、しばらく動かなかった。
彼の斜め後ろに立っていた私からは、彼の表情を伺い知る事は出来ない。
どんな顔をしているんだろう。
どう思っただろう。
そう思っていたら、優くんの明るい声が耳に届いた。
「な~んだ、そっか!」
彼は私にも見えるように笑顔を浮かべて、でもちょっと余裕の無い口調で尋ねてきた。
「まさか!まさか~!……とは思うけど。2人って付き合ってるとか!?」
わあああああ。
聞かれちゃったよ、ストライクな質問が。
あやふやだったものが的中したみたいにドンピシャで聞かれちゃったよ。
私がアタフタしている間に、カメ男がコクンとうなずくのが見えた。
「うん。付き合ってる」
優くんはヤツの答えを聞いて、体の向きを変えてまで私を真正面から見つめてきた。
その目は少しだけ憂いを帯びていて、今までにない顔つきだった。
「そっか……。梢、困らせてゴメンな」
「え?い、いや私は全然……困ってなんか……」
否定しようとしたものの、私の言葉なんて彼はあまり聞いていなくて。
あんなにまっすぐ見つめてくれていたのに、もう目は合わなかった。
そして次の瞬間、優くんは全速力でその場から走り去ってしまった。



