ウサギとカメの物語 2



水曜日の夜はノー残業デー。
ということで、先週末にカメ男の家に泊まりに行かなかった私にヤツからお誘いがあった。


「今日うちに来れば?」って。


ヤツはいつもこんな感じだ。
「泊まりにおいでよ」とか「一緒に過ごそう」とか、そういうことは言ってこない。


だけど私もそれなりにヤツの温もりが欲しくなってきたところでもあったので、断ることもなく承諾した。


定時で仕事を終えて、なるべく急いで女子更衣室で準備を整える。
いつも職員用出入口でカメ男と待ち合わせをして一緒に帰るというのが一連の流れだ。


セカセカと早足で廊下を歩いていたら、後ろからテンション高めの声がした。
「こーずーえ~っ!」って。


振り向かなくても分かる、この声の主。
こういう呼び方をしてくるのは1人しかいない。


「優くんも今から帰るところなの?」

「うん!そう!ねぇねぇ、今日は定時で上がったし、どこかでお茶して帰らない!?」


パタパタと尻尾をフリフリしながらこちらへ駆け寄ってくる優くんは、まさしく飼い主に忠実なワンちゃんに見えた。
これって、好かれているというよりも懐かれているような……。


「今からはちょっと~……、その~……」


カメ男と待ち合わせ中だし~、ヤツんちに泊まるし~、なんて言えばいいんだろう?


ポリポリ頬をかきながら答えを濁していると、優くんは私の腕を掴んでニコニコ笑顔で歩き出した。


「よし!そうと決まれば行きますか~!」

「…………え!?決まったの!?いつ決まったの!?」

「今だよ~!俺、梢に話したいこともあるしさ!相談に乗ってほしいんだ!」


優くんに引っ張られながら、相談って一体なんなんだろうとぼんやり考える。
この感じからしてまず告白では無さそうだし、そしてなにより断りづらい。