ウサギとカメの物語 2



どこかのベタな恋愛ドラマじゃあるまいし。
自分の彼氏に虫よけの役目を負わせるなんて正直時代遅れだと思ったりして。
なにが一番効果的かと言えば、張本人の私から優くんにハッキリキッパリと「付き合えない」と伝えればいいのだ。


カメ男にそういった行為をさせるのは期待が出来ない、というのも理由のひとつに入ってるんだけど。


でも。
最大のポイントはそこじゃない。


「優くんに面と向かってそういう雰囲気を出された訳でもないんだよね……」


私がつぶやくと、奈々は事もなげにフフッと鼻で笑った。


「言わせればいいじゃない。シラフで好きだって言わせる雰囲気を作っちゃえばいいのよ」

「……奈々がそれ言っちゃうの?」

「まぁ、確かに3年も順の告白を待ち続けた身としては肩身が狭いアドバイスだわね」


そうだそうだ!
そんな雰囲気作り出せるならとっくの昔にやってるわ!


私は不満げに口を尖らせて、肩をすくめて笑っている奈々に意見を述べてみる。


「たかだか半月やそこらで誰かのこと好きになるなんて、なかなか無いような気がするんだよね」

「優くんは一目惚れタイプなのかもしれないよ?」

「この平凡の塊みたいな私に一目惚れする男なんていると本気で思う?」

「平凡な女が好みなのかもよ?」

「貧乳だとしても?」

「貧乳が好みなのかもよ?」

「………………ねぇ、奈々。楽しんでるでしょ」

「あはっ、バレた?」


どこまでが本気のアドバイスだったのか、もはやよく分からなくなってしまった。
私も奈々も大概適当に過ごしてきた節があるので、こういう展開は自分の身に起きない限り楽しくて仕方が無いのだ。
きっとこれが他の誰かだったら、私だって楽しんでいたはずだ。


答えのない悩みを抱えたまま、豚の生姜焼きにガブッとかぶりつくのだった。