カメ男って本当にミスマッチなんだよなぁ……。
背が高いからスーツだってそれなりに似合ってるし、ネクタイも若干地味めだけど無難なものを身につけてるし、スタイルとしてはいいほうだと思うんだけど。
このボッサボサの寝ぐせがついた髪型のせいで、スタイルを台無しにしてるっていうか。


どっちがミスマッチだよ、というようなこの場にふさわしくない余計なことを考えている私の斜め上で、カメ男が首をかしげる。


「事務所行かないの?」

「あ、行こうと思ってたんだけどね。優くんが……」


私が答えかけたところで、グイッと優くんが体を割り込ませてきてカメ男とだいぶ近い距離で頭を下げた。


「柊平~!ほんとにほんとにごめんね~!!週末だったしさ、彼女が泊まりに来る予定じゃなかったのか?」

「たぶん大丈夫」

「ほんとに~!?良かったぁ~」


優くんは大げさに胸をなで下ろす仕草をして、カメ男の肩に手を置いてポンポン叩く。
そしてそのまま男2人は廊下を歩き出した。


彼らの少し後ろをついていくと、何故か優くんがカメ男に「彼女」について質問をし出した。


「柊平の彼女ってなんの仕事してんの?シフト制?」

「事務職。土日休み」

「遠距離って訳でもないんだろ?」

「市内在住」

「え、同棲してるとかじゃないよね?」

「あっちもひとり暮らし。…………なんでそんなこと聞くの?」


怪訝そうな顔をしたカメ男の横顔が見えた。
私だって後ろで聞いてて、ヒヤヒヤしちゃったよ。
ヤツのアパートに私の物をけっこう置いてるし、まさか優くんが勘づいたんじゃないかって不安になる。


優くんはなんだか少し含んだような、何かを言いたげな顔をして笑みを浮かべていた。


「ちょっと気になっただけ」