ウサギとカメの物語 2



━━━━━いや、ほんとにね、奈々のその心配は余計なお世話なんだよね。


置物とか、でくの坊とか、そういう言葉がピッタリ当てはまっちゃうのが須和なんだけど。


「なんか違うこと考えてるでしょ」


カメ男の部屋で、ベッドの上で。
ヤツの下敷きになってキスをされている時に、いったん顔を離したカメ男に冷静な声で指摘された。


「ううん。考えてないよ」


ちょっとだけ考えてたけど。
それは言わない。
止めてほしくないし。


だって私は、この人がくれるキスが好きなんだよね。


「好きだよ」とか「愛してるよ」とか。
ドラマとか映画でよ〜く聞いたことのあるトロットロの甘いセリフを、ヤツは絶対に言わない。


その分、この言い表せない沢山の愛情を込めた熱いキスが私にとっての安心材料だったりする。


「続きをお願いします、須和殿」


ややふざけた口調で催促すると、ヤツの口元が緩んで少しだけ笑う。
私はこれ以上の笑顔を見たことがない。
たぶん、この人にとってはこれが最上級の笑顔なんだと思うことにしている。
おそらく普通の人からしたら15%くらいの笑顔なんだけどね。


カメ男の柔らかい毛先が顔に当たってくすぐったい。
笑いをこらえていると、ヤツがおもむろにメガネを外す。


そのメガネを外す瞬間こそが、スイッチが入る感じがしてドキドキしちゃったりして。