ウサギとカメの物語 2



ところが。
ペデストリアンデッキの階段を降りようとしている時に、予想だにしないことが起きた。


私の肩にもたれかかっていたはずの優くんが、するすると力を無くしてその場にヘタり込んだのだ。
まだ4月半ばの肌寒い夜に、彼はあろうことか野外の通路の真ん中で居眠りを始めたらしい。


「優くん!優く~ん!!おーい、起きて~!!風邪引くよ~!!」


無理やり優くんの体を引っ張り上げて通路の端に引きずってきた私は、なるべく声を張り上げて呼びかけてみたものの反応は無い。
すやすやと寝息を立てて夢の中に潜っているらしい。


いくら揺さぶっても、頬をつねっても叩いても微動だにしない。


しばらくの間、彼の美しい寝顔を見ていたけれど。
見とれるとかそんな悠長なことはしてなくて。
ただただ呆然としていた。


…………どうすんのよ、こいつ。
寝ちゃったじゃないの。
このままじゃ私が彼をお持ち帰り(違う意味で)しなきゃならない展開だぞ~。


寒空の下で1人で頭を抱え込む。
私たちの姿を道行く人たちがチラチラと興味本位で眺めていく。
好奇の目に晒されて、イラッとしなくはない。


時には同じく酔っ払いのサラリーマンのおっさんが「彼氏寝ちゃったのかーい?」とか声をかけてくる。
彼氏じゃない、とか否定するのも面倒で、苦笑いだけを返した。


私は意を決して携帯を取り出した。


頼れる人は1人しかいない。
カメ男だ。