ウサギとカメの物語 2



ものの5分ほどで、優くんは現れた。


彼はすっかり酔っ払っていて、顔も真っ赤だし、ネクタイは外してるし、ワイシャツもベロンとズボンからはみ出ちゃってるし。
これで外したネクタイを頭に巻いて、お土産にお寿司でも持っていたなら漫画に出てくるような、酔っ払いのオヤジの出来上がりだと思った。
ただし違うのは、彼がとんでもなくイケメンだということだ。


かなり上機嫌でヘラッと笑いながら歩いてきた優くんは、私を見つけるなり抱きついてきた。


「こ~ず~え~っ」ってなかなかの大きな声で呼ばれてさらには抱きつかれたもんだから、酔っても赤くならない私の顔が赤くなるのを感じた。


「離して~!この酔っ払い!」


パンプスのヒールを優くんのスネに食い込ませながら抵抗すると、彼はようやく体を離してくれた。


あー、ビックリした。
ドキドキはしなかったけど、急に抱きつかれたりすると困るよね。
なにしろイケメンだから、相手が。
いくら残念な性格だとしても、ねぇ?


優くんは甘ったれた声で泣きマネをしつつ、私にグイグイすり寄ってくる。


「梢~、つれないなぁ~。かまってくれよ~」

「かまってるでしょーが!」

「ありがとう~!好きだ~!」


……………………え?
今、「好き」って言った?
言ったよね?聞き間違いじゃないよね?


目を丸くして見つめる私には全く気づかない様子で、優くんはトロンとした目でヘラヘラ笑っていた。


「好きだ~梢~。親友になりてぇよ~」


おいっ、どっちだよ!
ラブなのかライクなのか分かりづらいわ!


いずれにしても今の彼に聞いたところでまともな返事が返ってくるとも思えない。