ウサギとカメの物語 2



そのあと私と奈々は、仕事の愚痴やら藤代部長のハゲ具合やら秘書課の美女軍団の噂話やら、実に他愛もない話を繰り広げ、気づけばなかなかの時間になっていたので駅で解散となった。


奈々はこのあと田嶋のアパートで彼を待つことにしたらしく、地下鉄に乗るために別れた。


私はというと、本当は今日は自分の家に帰るつもりだったんだけど。
どうせカメ男のアパートに行ってもヤツは飲み会でいない訳だし、1人でポツンと待つのもなんだし。
でも、なんだかカメ男に会いたくなっちゃって。


たぶん、初めて奈々にヤツへの想いをハッキリ口にしたのも相まって、それで会いたくなったんだと思う。


バッグから携帯を出してカメ男に電話をしようとしたら、先に違う人から着信が来て手を止めた。


電話の相手は、今週連絡先を交換したばかりの優くんだった。


わーお。噂をすれば、だ。
一瞬ドッキリしちゃったものの、平常心を心がけて電話に出た。


「もしもーし?優くん?」

『あっ、出た!梢~!今どこにいる~?』


電話の向こうの優くんは、相も変わらずテンション高めで。
もしかしたら彼もどこかで飲んでたのかな、と呑気に考える。


「奈々と駅裏で飲んでたの。今から帰るとこ」


私が答えると、優くんはあからさまに嬉しそうな声を上げた。


『マジで!?俺も今、駅にいるんだよ~!会いたい会いたい!会おう!会いに行く!』

「えっ、でも……」

『駅のどこ!?』

「か、改札前……」

『あいよ~!』


すっかり優くんのペースに飲み込まれ、ついつい今現在いる場所を教えてしまった。
「今から彼氏の家に行こうと思ってるんだ」って伝える前に、電話はとっくに切られていた。