正直言って、カメ男が私のことでやきもきしたり、嫉妬したりする姿を一切思い描くことが出来なくて。
お互いにそうなんだけど、私たちはそんな恋のライバル的な人が現れる訳がないと思っているような気がしていた。
まぁ、実際現れてないし。
優くんのことだって単なる噂であって、彼が私にときめいてると感じたこともなければ、それらしい言動を目にしたこともない。
何もかも噂だけがひとり歩きして、真実はモヤの中なのだ。
だから噂って恐ろしいんだけど。
「ねぇ、いつも思うんだけど。コズってほんとに須和と付き合ってるんだよね?」
この奈々の質問を、私は何回彼女にされただろうか。
そんなに私とヤツが不釣り合いなのか。
それとも気づいてないだけでおかしいところでもあるのか?
私が不満げにジロリと彼女を睨んだからか、奈々はわざとらしく身震いする振りをして両腕をさする仕草をした。
「怖っ!怖い~!ドSの目つき~!」
「ちょっとやめてよ~、優くん2号って呼んでやる!」
「それ1番イヤ」
短いやり取りのあと、奈々が焼き鳥にかじりつきながらつぶやく。
「だって今までのコズだったら、恋愛中ってもっと浮ついてたじゃない?ノロケ話も平気でしてたし。須和と付き合ってからはそういうの皆無じゃない。それを踏まえると、な~んか実態のない恋人って感じでこっちとしては実感が沸かないのよ」
実態のない恋人、って凄い表現だな。
私とカメ男はそんな風に思われてたワケだ。
ノロケようものなら奈々から田嶋経由でカメ男に伝わると思って警戒してたのが、ここに来て微妙に仇になったらしい。
「心配しなくても仲良くやってるから安心して。ちゃんとあいつのことは……、その……、好きだし」
「……………………ほぉ~」
奈々が目を細めてニンマリ笑ったのを見て、しまった!と咄嗟に後悔する。
こういうのが恥ずかしいから避けてたのに。
うっかり、本当についうっかり溢れるヤツへの想い。
それをしっかり耳にした奈々はとても満足感を得た顔でビールを堪能していた。
「なんかホッとしちゃった~」って言いながら。



