ウサギとカメの物語 2



とろサーモンを口に運ぶ私に、奈々がふと何かを思い出したらしく急にニヤニヤと含んだような笑みを向けてきた。
そして、ゴクゴク喉を鳴らしてビールを飲んでいたら。
予想外のことを言われた。


「コズだって今、大変よね?イケメンに言い寄られちゃってさ」

「………………………………………………はい?」


一体なんのことだかさっぱり分からず、心当たりも全く無くて、捻るところまで捻って首をかしげた。


「なんのこと?」

「けっこう噂になってるらしいよ?ゆ、う、く、ん、のこと!」


ゆうくん?
ゆうくんって、あの優くん?
あのイケメンだけど残念キャラな高槻優斗のこと?


「何言ってるのよ。優くんに言い寄られたことなんてただの1回も無いんだけど」


どこのどいつだ、そんな根も葉もない噂を立てやがったのは!
これだから噂って疲れる。


私が即座に否定したからか、奈々はなんだかつまらなそうな顔をして眉を寄せていた。


「な~んだ、やっぱりそうなんだ。まぁ、ほんとにそういうことがあればコズから相談されるとは思ってたけどさ!」

「なんなのよ、その妙な噂は」

「だってコズと優くん、めちゃくちゃ仲がいいじゃない?夫婦漫才みたいな会話しちゃって。しかも彼ってすんごいイケメンだから社内でも目立ってるのよ。その隣にいっつもコズがいるから、噂になっちゃったんだろうね~」

「こ、怖いんですけど……」


何が怖いって、噂の内容を想像すると怖い。
おそらく、超イケメンとそのへんにいそうなどこからどう見ても平凡な女、とかいう面白おかしい表現で噂されていそうだからだ。
美女と野獣の反対バージョンとか言われてたりして。
それだったら凹みます。


あからさまに嫌そうな顔をしてしまったからか、そんな私を楽しそうに見ていた奈々が尋ねてくる。


「でもはたから見たら、言っちゃ悪いけどほんとにコズたちってじゃれ合ってるように見えちゃうんだよね~。須和から文句とか言われない?」

「あはは、言われたことなんてございません」


あの優くんを押し付けてきたのは紛れもなくカメ男本人であって、残念ながら文句どころか「気が合うだろ?」みたいな目をしてヤツがこちらを見てくる時があるのだ。