「い、いや~……。よ、呼んでみたかっただけ!それだけ!」


苦し紛れの言い訳が考えるよりも先に口からついて出た。
自分でも分かるほど声が上ずっていて、明らかに動揺しているのが伝わってしまった気がする。


カメ男はしばらく私の顔を眺めていたものの、つけっぱなしにしていたテレビをリモコンで消すと


「もう1回、呼んでみて」


と言った。


な、何を言い出すんだこいつ。
わざわざ小っ恥ずかしいことを言わせる気なのか!?
無理無理無理無理無理無理!
カメ男の思い通りにはならないんだから!


口を真一文字に閉じてヤツを見上げていたら、カメ男が再び同じ言葉を言った。


「もう1回、呼んでみて」

「そういうのは呼べって言われて呼べるもんでもなくて……」

「いいから、呼んでみて」


なんなんだよ、カメ男おおおおおおおお!!
一体なんの恨みがあるのよおおおおおお!!
どっちがドSだよおおおおお!!


もう精神的に追い詰められて半分ヤケクソになって、言い捨てるぐらいの勢いで


「柊平!」


って言ってやった。
ついでに可愛くない一言も添えた。


「ほら、これで満足した!?」


カメ男相手に照れるのは癪だった。
それなのにたぶん私は今、顔もちょっと赤くなっちゃってる。


ヤツはこんな状況だっていうのに笑った。
いつものように、口元を緩めただけの笑み。
そして、その目は何かを企んでいた。