ウサギとカメの物語 2



話が逸れてしまったから元に戻すけれど。


とりあえず親友の奈々には、この溢れんばかりの私の恋する乙女な気持ちはちょっとだけ伏せて、かっこつけて


「まぁ、いい奴だったから付き合うことにしたんだよね〜」


とか言っておいた。


だってカメ男のことが好きでたまらないとか奈々に口走ろうものなら、彼女の恋人であり同期でもある営業課の田嶋経由で結局本人の耳に入ってしまうような気がして。
そんなの恥ずかしすぎて耐えられないので、奈々にノロケたりするのは絶対しないと決めているのだ。


「へぇ〜。いやぁ、でもビックリしたわぁ……天変地異でも起きたかと思った。もちろん応援はするからね!そっちは私たちと違ってバレたらヤバいもんね」


神妙な顔つきでそう言う奈々の言葉は結構重い。


バレたらヤバい、とは。
会社にバレたらヤバいのだ。


私たちの勤めている会社では、社内恋愛は珍しくない。
恋愛はご自由にどうぞ〜っていう社風で、そのままめでたく結婚してゴールインというパターンも多い。


ただし、あまりにも近い場所……すなわち同じ部署内での社内恋愛はさすがに目をつけられる。
せめて奈々と田嶋みたいに部署が違っていたらお咎めは無いのだけれど。
私たちみたいに事務課の者同士となると、どちらかが異動の対象になってしまう可能性が高い。


そうなってくると、必然的に付き合っていることは隠さないといけなくなってしまって……。


したくもないコソコソを、しなければならないのだ。