ウサギとカメの物語 2



バラエティー番組を見て、あははと大きな笑い声を上げる私。
カメ男はいつものように笑いもせずに黙々とお酒を飲んで、そして私が作った料理をパクパク食べる。
そして時々「美味い」って言ってくれる。


「来週の金曜日は、久しぶりに酔いどれ都に行かない?」


と提案すると、ヤツは考える間もなくコクンとうなずいた。
拒否するわけがない。
居酒屋「酔いどれ都」は私もカメ男も大好きなお店だからだ。
とにかくお酒も料理も、全てが美味しい。


優くんみたいにおしゃべりな人って、確かに飽きないんだけど、私としてはカメ男とのこういうほとんど会話の無い時間も割と好きな方で。
きっと、友達に求めるのは優くんのような楽しさで、恋人に求めるのはカメ男みたいな安心感なんだ。


だから少し前に奈々に言われた「優くんに乗り換えたら?」というセリフは、到底有り得ないのだ。
まぁ、優くんとしても私みたいな平凡な女なんて願い下げだろうけど。





明日は休みだし、いいくらいお酒を飲んで。


カメ男がお風呂に入ってる間に私は食器などの洗い物を済ませて、ついでにヤツの部屋の中に干しっぱなしになっていた洗濯物も綺麗に畳んでおく。
さらに言うなら、ワイシャツにアイロンもかけた。


付き合い始めた頃に、アイロンを持っていなかったカメ男。
ヤツはワイシャツをクローゼットに10枚ほど常備しており、週末にまとめてクリーニングに出していたらしい。
でもそれだとクリーニング代も勿体ないので、洗濯だけはヤツにしてもらって、あとは私がアイロンをかけるという役割を担っていた。


私もひとり暮らしはまぁまぁ長いので、ひと通りの家事は素早くこなせる。
私の中にある女らしさってそれくらいしか無いような気がしてちょっと虚しくなることがある。


慎ましやかでもなければ清らかでもないし。
相変わらず特徴の無い性格だよねぇ。
普通すぎるっていうか。