ウサギとカメの物語 2



時計の針が12時を指し、キンコン、という機械的な鐘の音が放送で1度だけ鳴る。
これがうちの会社のお昼休みの合図だ。


私と奈々はあらかじめ会社から歩いて5分ほどのハンバーグ専門店に行く予定だったので、お財布をデスクの引き出しから引っ張り出して立ち上がる。
2人でさっさと事務所を出ていこうとしたら、後ろからカメ男に呼ばれた。


「大野。ちょっと」

「なに?」


聞き返しながら振り返ると、カメ男とイケメンくんが並んでこちらを見ていた。


おわ~っ!!
ほんとにこれはすごい!
近くで見ると半端じゃないイケメン具合!
ドキドキしちゃうよ~!
芸能人見てるみたいだぁ~!


内心かなりのミーハー心があったものの、それはひた隠しにしてカメ男の顔色を伺う。
ヤツの顔はげんなりしていた。


カメ男は私と奈々の顔を見比べて、そのあと隣のイケメンくんを親指で指差し、


「高槻を昼飯に連れてってやって」


と言ってきた。
すぐさま私より先に奈々がうなずく。


「いいけど、須和は?」

「俺は堅苦しい店での昼飯はいい。いつもの牛丼屋に行くから」


カメ男が前に言っていたことだけれど、ヤツいわく、私と奈々がいつもランチしているお店は女の子が多いから行きたくないのだという。
料理が出てきて、すぐに食べずに携帯のカメラで1度撮影してから食べるのも理解出来ないらしい。
なので、ヤツはチェーン店の牛丼屋と、チェーン店のうどん屋、チェーン店の立ち食い蕎麦屋のループをかれこれ7年続けている。


「分かった。じゃあ一緒に行こっか」


私がイケメンくんにそう言うと、彼はとても嬉しそうに「ありがとう!」と私たちに笑顔を振りまいたあと、そそくさと行こうとするカメ男の腕をガッチリ掴んだ。
まさか引き止められると思っていなかっただろうヤツは、珍しく奥二重の細い目をちょっとだけ見開いて驚いていた。


「なーに言ってんのさ、須和くん!君も一緒に行くんだよ!仲良くしようぜ~!」

「いや俺は牛丼を……」

「さ、4人でレッツゴー!」


あっはっは、と高らかに笑って歩き出すイケメンくん。
さすがのカメ男も彼のペースに巻き込まれ、結局私たちは4人でハンバーグ専門店へ行くことになった。