ウサギとカメの物語 2



それからはいつも通りに仕事が始まった。


いつも通りと言っても、それはあくまで私たちだけ。
カメ男にとってはいつも通りじゃなかったらしい。
異動してきたイケメンくんに、ひと通り仕事を教えなければならない。
ひと通りと言ってもまずは基本的な計算業務、電話対応、雑用とか。
おそらくイケメンくんだって長町支店でそれなりにやっていたであろう仕事を、最初から教えなければならないのはカメ男にとってもイケメンくんにとっても若干面倒だと思う。


だけど本社に勤めるには本社のルールがあるわけで。
それを1からイケメンくんに教えるのはなかなかの骨折れ作業だ。


そして肝心の教えてもらう立場のイケメンくんは、私に勝るとも劣らないおしゃべりで。
さっきからカメ男のデスクからヘラヘラとした(ただし超絶かっこいい)イケメンくんの笑い声と雑談が聞こえていた。


「えぇ?なに?須和く~ん、もっと声張ってくんなきゃ聞こえないよ~。何言ってるか全然分からな~い」

「あー、かったるいね~。ほんとは須和くんだってかったるいって思ってるでしょ~?お金を稼ぐって大変だよねぇ~。計算機叩いただけでお金が出たらラクなのにね~」

「ねぇねぇ、今度幼稚園の先生たちと合コンするんだけど、須和くんも一緒にどう?独身でしょ?」

「てゆーかさぁ、そのダッサいメガネ外した方が良くない?」

「そもそも須和くんって彼女いるの?」


だんだん際どい質問になってきて、私の方は気が気じゃなくてハラハラしながらヤツたちのデスクをチラッと見やる。


迷惑そうに眉を寄せながら、おそらくイケメンくんの質問は華麗にスルーしているであろうカメ男。
それにめげることも無くグイグイ質問を投げかけるイケメンくん。
イケメンくんの声はガンガン聞こえてくるものの、カメ男のボソボソ話す声は私の耳までは届かなかった。


「最高にかっこいいけど、最強に強烈なキャラだわ……」


奈々のつぶやきに、私は間髪入れずにうなずく。
強烈なキャラと言えば総務課にいる同期の女、久住を思い出すけれど。
彼女とイケメンくん、どちらも相当な曲者だと思った。