本社の事務課には長町支店からの異動が1人、営業課に新入社員が1人。
あとは総務課と経理課にも入ったみたいだけど、詳しくは分からない。
フロアが違うだけでいまいち情報が入ってこないものの、私たちと直接関係は無いので追求もしない。


週が明けて、新しく仲間入りする2人が事務所に現れた時、明らかに女子社員がざわついた。


小ざっぱりした黒髪に、中肉中背の初々しい緊張した表情を浮かべているまだ大学生の雰囲気が漂うスーツを堅苦しく着た男の子と、その後ろからついてくる、目鼻立ちがハッキリした背の高いスラッとした少し茶髪っぽい髪の毛の、スーツを着こなす男性。


どっちが新入社員で、どっちが異動してきたチャラ男なのか、一目瞭然だった。


イケメンに大して興味を示すことのない奈々でさえ、「うわぁ~お、こりゃめちゃくちゃかっこいいな」とつぶやいてしまうほどだった。


「事務課でお世話になることになりました、高槻優斗です。優くんって呼んでね」


慣れた口調でヘラッと笑いながら事務課のメンバーに挨拶をするその人は、真野さんによってさらに紹介された。


「彼はうちの会社に入って5年目なのよ~。でも中途採用だから、年はいくつだっけ?29歳だったわよね?みんな仲良くしてあげてね~」


29歳、独身、イケメン。
でもチャラい。
なんて惜しいの~!


目の保養には十分すぎるイケメン具合に、ニヤつきそうになる口元をどうにかひた隠しにしながら「よろしくお願いしまーす」と曖昧にみんなと一緒に声をかける。


「それで高槻くんは~、とりあえず1週間、須和くんに基本的なことを教えてもらってちょうだい」


真野さんが隅っこの方にボーッと座っているカメ男の腕をグイグイ引っ張って、超絶イケメンの前に連れ出す。
彼らが2人並ぶと、こう言っちゃ悪いけど陰と陽って感じがした。
もちろん陰がカメ男です、はい。


「えぇ~、男に教わるんですかぁ?女の子がいいなぁ~!」

「つべこべ言わないの!同い年だから話しやすいでしょ?」

「須和柊平です」


嫌がるイケメン、諭す真野さん、冷静に名乗るカメ男。


遠目で見ていて吹き出しそうになった。