ウサギとカメの物語 2



誰!?と、思って振り返る。
おそらく同時にカメ男も肩を叩かれたようで、ヤツも私と同様に後ろを振り返っていた。


そこには、見慣れた明るい満面の笑顔。
優しくて朗らかな、ほほほ、という特徴的な笑い声。


「あら、偶然ねぇ〜!今帰りなの〜?」


まさかの真野さんだった。


即座にあんなに離したくないと思っていたカメ男の手をパッと惜しむことなく離して、ついでにヤツにくっつけていた体も間に1人入れるくらいの距離を離しておいた。


「ま、ま、真野さんじゃないですかぁ!ど、ど、ど、どうしてここに?かか、買い物ですか?」


焦るな、梢!
平常心よ、平常心。


完全に動揺しまくりの自分の声を聞きながら、笑えてしまいそうになる。
これじゃ確かにカメ男に「挙動不審」と言われても仕方が無い。


「火曜日と金曜日は駅前の塾に子供を送り迎えしてるのよ〜!さっき送って、ついでに買い物してたところでね」


ニコニコ笑いながら真野さんが話し続ける中、横目でカメ男の表情を伺ってみる。
ヤツは3%くらいの微かな微笑みを浮かべて真野さんの話を聞いていた。


微笑んでる場合じゃないだろっ!


「で?2人は?これから、ど、こ、に?」


楽しさと嬉しさを我慢することなく笑顔に込めて、真野さんがわざとらしく尋ねてくる。


アウトだ……。
これは間違いなくアウトじゃないか。
週明けに異動を命じられてしまう!


せめて同期だから、2人で飲みに行こうと思ってたとか言い訳しておいた方がいい?
でも手を繋いでるところは絶対に見られたし、言い訳したら余計ややこしくなるかな?


どうしようどうしようどうしようどうしよう……。
ぐるぐる迷っていると、カメ男があっさりと


「今から俺の家に行くところです」


と答えてしまった。