ウサギとカメの物語 2



間もなく4月。
だいぶ暖かくなってきて、厚手のコートはいらなくなった。
代わりに薄手の春コートを着ることが増えてきたように思う。


私たちの付き合いも3ヶ月を過ぎて、だいぶ落ち着いてきたように感じていた。


……と、いうか。
私たちは最初からラブラブでもなければ干からびてもいなくて。
ずーっと同じちょい低めのテンションで(私だけは高いんだけど)、ものすごい盛り上がりを見せることもなく盛り下がるわけでもなく、まるで熟年夫婦のような風格さえ漂っているんじゃないかとちょっと笑える。


だけど2人だけで歩くとき、時折ヤツが差し出す手が私の気持ちを上げてくれる。


その時折というのが今日だったらしく、けっこうな荷物を持ってるっていうのにヤツが左手を差し出してきたので、私は急いで買い物袋とバッグを左手に持ち替えて右手でカメ男の手を握った。


なんにも言わない。
目も合わせてくれない。


でも手を繋いでると安心するから不思議よね。


「こういうところを会社の人に見られたら、私たちのことどう思うんだろう?」


多くの人が行き交う駅の構内を歩きながら私がそういうと、カメ男はちょっとだけ考えるような顔をして聞き返してきた。


「離してもいいけど、離そうか?」

「ううん。やめないで」

「付き合ってると思われちゃダメなんでしょ?」

「そうだけど……。でも、やめないで」


矛盾してるよなぁ、と思いつつも手を離しなくないがために首をブンブン振り続ける。


私たちみたいなごく普通の地味な恋人のことなんて、誰かの目に留まる訳ない。
だからきっと大丈夫だよね。


そう思っていたら。


後ろからポン!と方を叩かれた。