ところが。
私のそんな心配を、カメ男はたった一言で片付けた。
『別にバレてもいいんじゃない』
あまりにも驚きすぎて携帯を落としてしまうかと思った。
いや、ほんとに。
それでなくても画面が割れたままだっていうのに、これ以上割れちゃったらもうさすがに買い替えしかないよね。
まぁ、それは置いといて。
今回の真野さんの件を一応カメ男にも言っておかなくちゃと思って、自分のアパートに帰宅してからヤツに電話したのだ。
ヤツはまだ家には帰っていないらしく、若干ザワつく背後の音に紛れながらいつもの調子で『別にバレてもいいんじゃない』と抜かしたのだ。
「なにそれ!だってバレたらどっちか異動だよ?離ればなれだよ?」
『どっちにしたって県内にしか異動しないんだから、問題無いでしょ』
「えぇ〜っ……」
冷めてる。
私に比べたら……いや、比べなくても冷めてる。
そんなもんだったのか、あんたの情熱は!
ワナワナと怒りに震えていたら、ヤツののんびりした声が電話越しに聞こえた。
『あー……、それで挙動不審になってたってことね』
合点がいきました、とばかりにつぶやくヤツの冷静な声が私のマグマのように熱くなった頭に一滴の水を滴らせる。
…………なんか、すごい温度差だな。
つまりはこういうこと。
週末に会えれば別に問題無いってことよね、ヤツからしてみれば。
もともと平日だって仕事では会ってるけどそんなに話してるわけでもないし、学生じゃあるまいし。
きっとそんなところでしょ。
そんなの寂しいじゃない!
それくらい伝えたっていいよね?
可愛いなこいつぅ〜、とか思ってくれないかなぁ。
1ミクロンでもいいからさ〜!
思い切って寂しいって口にしてみようと深呼吸した。
「でもさぁ、私は……」
『悪い。電話切る』
カメ男は私の勇気をものの見事にたった二言で両断し、そのまま電話は切れてしまった。
ポカーンとワンルームの部屋の真ん中に突っ立ったまま、真っ暗になった携帯の画面を見つめる。
「カメ男のバカ野郎っ!」
ボフッとベッドに携帯を投げつけて、誰もいない部屋で地団駄を踏んだ。



