そして、カメ男の実家に挨拶に行くことになった私はというと。
極度の緊張の中、ヤツの両親と会ったのだった。


カメ男の両親は、信じられないことにとても気さくで明るいお父さんとお母さんだった。
特にお母さんなんかはけっこう話し好きな感じで、ウキウキと弾んだ声で私に色々聞いてくれたりして。
お父さんも物腰が柔らかな優しそうな人だった。


「うちねぇ、柊平以外の兄と妹はもう2人とも家庭を持ってるのよ。だから1人だけ残っちゃって、しかもこんな感じだから。一生独身なんじゃないかってお父さんとやきもきしてたのよ!ね?お父さん!でも今日は安心したわ!梢さん、可愛らしくて女性らしい人なんだもの」

「そうそう。良かったな~、柊平。こんな慎ましい女の子がお嫁さんになるって言ってくれて」

「…………いや、女性らしくも慎ましくも無い。……イテッ」


せっかくご両親が私を褒めちぎってくださっているというのに、カメ男ときたら否定するんだから。
ムカついてテーブルの下でヤツの足を踏みつけてやった。


どうやったらこのお父さんとお母さんに育てられて、カメ男みたいな奴が育ったのかは謎だったけども。
だけどとりあえず私のことは気に入ってくれたみたいで、入籍もなにもかも好きなようにしなさいと声をかけてくれた。




そうやって私たちは両家の顔合わせも2週間後におこない、トントン拍子に事が進んでいったのだった。