目も口も開きっぱなしのアホ面を顔に貼り付けて、もしかしたらこの時は体中の毛穴も開いちゃってるんじゃないのってくらい、全神経が、全細胞が総動員して騒いで、ぐらぐらと足元を揺らした。
ポカーンと立ち尽くす私がいるキッチンと、ヤツが立つダイニングにはカウンターという仕切りがあって、ものすご~く邪魔に感じた。
そもそもそんな状況でしれっと「プロポーズ」とか口にしちゃうカメ男って……。
いや、すごくヤツらしいのかも。
カメ男は私の一時停止がよっぽど面白かったらしく、肩を震わせて笑いをこらえている。
もうそこまで笑うなら、いっそのこと大爆笑してほしい。
大笑いしてる姿を見せてくれ~。
「結婚してください」
と、ヤツの唇が動いたのを見て、そしてハッキリ聞こえた言葉を聞いて。
私は沸騰しそうな頭でつぶやくように返事をした。
「私で良ければ……嫁にもらってください」
どこのおばあちゃんですか?って聞かれそうなほどヨロヨロした足取りでキッチンを出て、そのままカメ男のいる場所まで向かう。
するとヤツは手に持っていた花束を私に渡してくれた。
手にした花束は、黄色やオレンジ色などのビタミンカラーのお花をベースにした可愛らしい小さな花束だった。
その花束をボーッと見ていると、カメ男が床に置いていた段ボールから白い小さな箱を取り出すのが見えた。
それは、それは………………。
ま、さ、か。
夢にまで見た、あの……。
「指輪、一応用意してあるんだけど」
と、カメ男が白い箱からシルバーの指輪を出して私を手招きする。
なので、そろ~りそろ~りと静かにヤツに近づいた。
「エ、エ、エ、エンゲージリングってやつですか?」
「動揺しすぎでしょ」
「だ、だ、だだ、だってさ!ぜんっぜんそれらしいこともなんにも言ってなかったじゃない!私ちっとも気づかなくて……」
「気づかれないようにしてたの。早く左手出して」
「あ、はい……」
私がおずおずと左手を差し出すと、ヤツは指輪を薬指につけてくれた。



