ウサギとカメの物語 2



カメ男が新しく借りたアパートは築4年というだけあって本当に綺麗で、そして駅からとても近くて、よくまぁこんな素敵な物件をうまい具合に見つけたなぁというほどだった。
見た目は淡いクリーム色の優しげな外観で、家賃とかけっこう高いんじゃないのかと勝手に心配になった。


どうやらヤツの部屋は3階建てのうちの1階のようで、階段を通り抜けて1番奥の扉の前で立ち止まると鍵を取り出した。
扉に鍵を差し込んだ瞬間、私はヤツの背中に向かって問いかけてみた。


「ねぇ、ここ家賃いくらなの?」

「………………前よりは高い」

「だよねぇ。だって新しいし綺麗だし、駅近だもんね」

「でも梢には便利でしょ。車無いし」

「え、もしかして私のために駅近にしてくれたの?」


少しビックリして目を丸くしていると、ヤツはハッキリとうなずくことはせずに微妙に首を捻るのだった。


「俺もその方が助かるし。飲み会の帰りとか歩くのが面倒だから」

「あっそ。期待して損した」


嘘でもいいから梢のためだよって言ってくれたっていいのに。
そしたらそれはもう子供のようにはしゃいで喜ぶのになぁ。
肝心なところで欲しい言葉をくれないんだから。


部屋の鍵を開けて、ドアを開く。
真新しくて綺麗なフローリングの廊下が見えた。
生活感の全く無い玄関は思ってたよりもスペースがあって、そして廊下も広い。
こんなに広いと、まるで━━━━━。


「ねぇねぇ、柊平」


と、私がまたしても質問をしようとしたらヤツに「ダメ」と先に遮られた。


「ここから先は質問は受け付けません」

「え?どういうこと?」

「とにかく、質問しないで」


なんなのよ、一体!
質問しちゃダメってどういうこと?
でもそれすらも聞いちゃいけないんだよね。
いつから秘密主義者になったんだ、カメ男~!


よく分からないながらも、カメ男に言われた通りに何も聞かないことにした。