ウサギとカメの物語 2



「ちょっと今から連れていきたいところがある」

「今から?どこ?」


ヤツの耳に私の声は絶対に聞こえたと思うんだけど。
これといった明確な返答も無く、カメ男は改札口を背にしてのっそり歩き出した。
こういうのも、今に始まったことじゃない。


どこにでもついていきますとも、ってくらいの気持ちでヤツの背中を追いかけてみることにした。





カメ男はエスカレーターを降り、またもうひとつエスカレーターを降り、地下道へ潜っていく。
少し歩いた先に地下鉄の改札があって、そこで切符を2枚購入。
改札を通って乗り場へ向かう。


時間はそんなに遅いわけじゃなかったけど、週末だし、飲み会帰りの学生やサラリーマンなどでホームは少しばかり混雑していた。


「もしかしてさぁ、新居見せてくれるの?」


5分ほどで到着した地下鉄に乗ってゆらゆら揺られながらカメ男に聞いてみると、ヤツはコクンとうなずいた。


「先週から中に入れるようになったから、荷物を少し運んだんだ。明日と明後日で本格的に引っ越しだけど、その前に梢にも見てもらおうかと思って」

「ほぉ~!どんな部屋か楽しみ!前より広いの?」

「少し広い程度かな。築4年の綺麗なところだよ」


楽しみではあったけど、ヤツらしく黒とかグレーとかのインテリアで揃えて無機質な感じになっちゃうんだろうなぁ。
インテリアにこだわりは無いらしいんだけど。
前より少し広いなら、ソファーでも買ってくれるとありがたいなぁ~なんて勝手に思ったりして。


今までそこまで利用頻度が多くなかった地下鉄だけど、これからはカメ男のアパートに週末だけ泊まりに行くだろうからな。
慣れなくては。