送別会は少人数にも関わらずなかなかの盛り上がりを見せたものの。
酔っ払いの3人のうち優くんがマーライオンとなり、トイレジャックをするという事態にまで突入してしまったため、二次会に行こうと言い出す人はいなかった。
優くんのことは久住が迎えに来て、音速の速さで連れて帰ってしまった。
「あー楽しかった。須和、また飲も!」
そんなことを言った上機嫌で笑いっぱなしの奈々と、半泣きでカメ男にすがりつくように真野さんが
「須和く~ん……。結婚式には呼んでねぇぇぇ。コズちゃん絶対キレイよぉぉぉぉぉぉ」
って暴走していた。
「今日はありがとうございました。いつかまた本社に戻ることがあった時は、よろしくお願いします。お元気で」
カメ男の最後の挨拶とも取れる言葉は、やっぱりヤツらしく淡々としたもので。
せめてニッコリ微笑んでもいいのに、いつものボーッとした顔だった。
ヤツの荷物をひとつ預かっていた私は、居酒屋を出て駅の構内に入ったあともそれを持ち続けていて、いつヤツに返そうかとタイミングを見ていた。
やがて電車の改札が見えてきたところで、ふとカメ男が足を止める。
私はちょっと不思議に思ってヤツを振り返った。
「どうしたの?」
私が尋ねると、カメ男は何かを言いたげにこちらを見つめてくる。
しゃべらないのはいつものこと。
言葉が足りないのはいつものこと。
だからこれもいつもの反応だ。
一応違う言葉をかけてみる。
「飲み足りないならどこか入る?」
「……う~ん。いや、いい」
「じゃあ、どうしたのよ?」
私ははてなマークを頭上に並べて、ヤツの返事を待った。



