照れたように斜め向かいの席に座る美穂ちゃんにアイコンタクトを送る神田くん。
それに応えるようにはにかむ美穂ちゃん。
2人の初々しい姿についついオバチャン心がほだされて、ドキドキしてしまった。
「あららら、いつの間に~」
「みんなには内緒ですよ」
「あ、そうだ。ひとつ教えてあげる」
ラブラブな2人に水を差すようで申し訳ないんだけど、ぜひとも私たちの二の舞にしたくないという思いから神田くんに忠告してあげた。
「総務課の久住愛里には気をつけて!」
「く、久住……さん?」
彼女だけは血も涙も無い……じゃなくて、情に流されない鉄の女ということで。
「頑張れ若者!」とオヤジくささ全開の言葉を口走りながらビールをグイッと一気飲みした。
けっこうハイペースで飲んでいるのにも関わらず、全然酔えなかった。
ついでに言うなら、後輩たちと楽しく話もしてるんだけど、それでもなんだかうわの空になっちゃって。
この見慣れた事務課のメンバーからカメ男がいなくなるってことが信じられなくて。
来週の月曜日にはカメ男のデスクは空っぽになっていて、きっと他の誰かが使うことになるんだと思う。
優くんあたりがデスクを移動して使うかもしれない。
少し顔を上げるといつも見えてたヤツの頭が、もう見えないんだなぁと思うと、不思議なくらい胸にぽっかり穴が空いたような感覚になるんだ。
片想いしてるわけでも、振られたわけでもないのに。
両想いで付き合っているのに。
それでもそんな気持ちになるなんて、ちょっと子供っぽいかな。
重すぎる女かな、なんて思ったりした。
3人の酔っ払いに絡まれ続けるカメ男を眺めながら、ほんの少し切なくなった。



