ウサギとカメの物語 2



仕事は早々に定時で切り上げて、みんなで会社の外でカメ男を待っていたものの。
ヤツはなかなか現れず。
ようやく現れたと思ったら、両手にでっかい紙袋を抱えて会社から出てきた。


「なにこの荷物!多すぎでしょ!」


3つある紙袋のうちひとつを問答無用でカメ男に押しつけられた私が文句を言うと、ヤツはボソッと


「7年半の積み重ね」


とつぶやいた。


要するに事務所のデスクの私物とか、仕事を覚えるために使ったファイルとか、そういったものがとりあえず詰め込んであるらしい。


当然のごとく歩くのが遅いカメ男に合わせると、事務課のみんなより断然遅れていくわけで。
人通りの多いアーケード街で前を歩く奈々たちを見失わないようにしながら、カメ男の背中をせっついた。


「今日、本社に泉営業所の課長が来てたから挨拶したんだ」


重たい紙袋を抱えるようにして歩いていたら、急にカメ男が話し出した。


「へぇ~。……もしかして柊平に会いに来たとか?」

「まさか。用事のついででしょ。熊谷課長よりは人の良さそうな感じだったよ」

「あはは、なにその感想」


私が笑っていると、ヤツは両手に持っている紙袋を見下ろしながら


「やっと実感がわいた。異動するんだなって」


と言った。


なによ、急にしんみりしちゃって。
なんて返せばいいか分かんないじゃない。
こうやって会社から駅まで一緒に歩くってこと自体が今日で最後だと気づかされてしまった。