ウサギとカメの物語 2



うちの会社は社内恋愛には緩くて、でも部署内のそれには少し厳しくて。
奈々みたいに営業課に彼氏がいるならこんなことにはならなかったのにね。


人と比べちゃいけないんだけどなぁ。


前向きに物事を考えることが得意だったはずの私なのに、どうしちゃったのかしら。


今日くらいこの不安をヤツにぶつけてもいいよね。
今日くらいは、さ。


カメ男の首に手を回して自分からキスをした。
最初は軽く、触れるだけ。
徐々に深く、絡ませる。
ヤツは私のキスに間も開けずに応えてくれて、長い時間抱き合ってキスを交わし続けた。


素直になれない私の、言葉では伝えられないほどのカメ男への気持ち。
ヤツがそれをどう受け止めたのかは分からない。
なんにも話してくれないから。
だけど、温かい手で体に触れられるだけで驚くほどに安心した。


「あのさ」


ベッドで体を重ねている最中に、飛びそうな意識をどうにかこうにか起こしてヤツに話しかけた。


「ん?」と首をかしげるカメ男の目を見て、私は初めて自分の気持ちを伝えた。


「好き」


もしかしたらヤツも同じ言葉を返してくれるかもなぁ、って1ミリほど期待を寄せてみたんだけど。
さすがカメ男さん。
見事に人とは違う言葉を口にした。


「知ってる」


なんちゅー返事だよ、とツッコミそうになったけど。
言わずに今までの約1年分の「好き」を繰り返した。


「すごい好き。ものすごい好き。めちゃくちゃ好き。どうしようもなく好き。全部全部全部全部全部ぜ~んぶ、好き。大好き」

「……………知ってる」


だからさ。
返事の仕方がおかしいんだけど。


でも、スッキリした。
思い出が詰まったヤツの部屋で、自分の気持ちは全部言えたような気がしたから。


私が笑うと、ヤツも笑った。