色んなことが、変わっていく。
私だけが取り残されて━━━━━。
平日は仕事でカメ男に会い、会話をすることが無くても顔を上げれば少し遠く離れた席でヤツが黙々と仕事をしている。
いつ見ても電卓を叩く指と、パソコンのキーボードを滑る指は超高速で、電話でお客様や取引先と会話するヤツの声は穏やかで。
決して愛想がいいとは言えないけれど、静かに電話の相手の話に耳を傾ける。
仕事上そんなに話すことのない私たちが時々会話を交わす、廊下の奥の給湯室。
そこで人の目を盗んで何度かキスしたっけな。
充電したいとか、疲れたとか、そういう言い訳をしてヤツに抱きしめてもらったことだってある。
他人に流されることなく、コツコツ地味に地道に過ごしてきたヤツの魅力は、きっと流行に流されやすくて愛嬌だけで切り抜けてきた私には無い堅実さのような気がした。
毎週金曜日にヤツのアパートへ泊まりに行き、2人でのんびりお酒を飲んで、私の止まらない話にヤツが相槌を打ってくれる。
時々外に飲みに行ったりもする。
2人で抱き合って狭いベッドで眠るだけで、心が満たされていた。
ヤツの両手は毛布みたいにあったかくて。
それにくるまれるだけで優しい気持ちになれた。
私がヤツののんびりした歩調に合わせて歩く。
いつも流してみていた景色が、鮮やかに変化していくことを知った。
そんな単純で何気ない日常が、変わっていく。
私もヤツも、お互いに面と向かって「好き」とか「愛してる」とか、伝え合ったことなんか1度もない。
1度もないけど、私はとっても幸せで……。
だからこそ、環境が変わることが怖いのかな。



