菅原主任の顔をじっくり見るのもゆっくり話すのも初めてだったから、チラチラ見ておいた。
確か、美人な奥さんがいて子供も2人いるんだったっけな。
主任は短髪で清潔感があり、イケメンではないけどそれなりに落ち着いていて素敵な雰囲気を持っていて。
カメ男にも少しは見習ってほしい爽やかさを醸し出していた。
その菅原主任が不意に顔を上げる。
「大野さんって実家はどのへんなの?」
「あ、実家ですか?古川です」
「古川!じゃあ古川営業所に異動になったら実家にも帰れるしいいよね?」
屈託のない笑顔でそう言われて、私は思わず「えぇっ!」とあからさまに嫌な顔をしてしまった。
それを見て主任が大爆笑する。
「あははは、ごめんごめん。冗談だよ」
なんっつー笑えない冗談言ってんだ!
……という文句はどうにか我慢して。
作り笑いだけ顔に貼り付けておいた。
「異動は須和くんにしてもらうつもりだよ。彼もそうしたいと言っていたしね」
「え?」
突然告げられた事実に驚いて戸惑っていると、主任は手に持っていたボードをテーブルに置いて微笑んだ。
「彼は仕事が出来ると真野さんから太鼓判を押されてるから、事務課のミスが際立って多い泉営業所に行ってもらうつもりでいるんだ。須和くんにはさっき伝えたよ」
あれれれ。
思ってたよりも早く異動先が決まっちゃったぞ。
これは困った。
想定外で困る…………。
「異動はいつからですか?」
なるべく平静を装って、主任に聞いてみる。
彼は壁掛けのカレンダーに顔を向けると、目を細めた。
「12月から。あっちにも伝えてある」
あぁ、そうか。
ちょうどあと1ヶ月しか無い。
私とカメ男が一緒に働けるのは、あと1ヶ月だけなんだ………………。



