ウサギとカメの物語 2



真野さんももっと突っ込んで聞いてきてくれればいいのに、それ以上は何も言ってくることはなく、いつものような、ほほほ、という独特の笑い方をして


「あらやだ〜。一般論よ、一般論。お肌なんか白くたって黒くたって、男なんてどっちでも構わないわよ〜、きっとね」


と右手をヒラヒラと動かしていた。


テーブルの下で奈々の膝が私の膝を軽く小突いてくる。
ひとまず私も同じように彼女に小突いて返すしかなかった。


「リゾート系が嫌なら、コズちゃんたちは温泉かしらねぇ?夏休みとか利用して行ってみたらいいんじゃない?」

「は、はぁ……」

「確かにアウトドアっていうよりもインドアっぽいもんねぇ〜」

「は、はぁ……」

「ディズニーランドなんてもってのほかかしら〜?」

「そ、そうですね……。おそらく……」


ニコニコ楽しそうに旅行の提案をしてくる真野さん。
怖いっ、怖いぞ真野優子!!
まるで私の恋人がカメ男だと気づいているような言い方じゃないの!!


誤魔化すのもアレだし、下手に嘘をつくのもおかしいから、なんとなーく合わせて話はしたけれど。


社内でも大してろくに話もしない私とカメ男。
気づく人なんて絶対にいるはずがないと、不安とかそういうのは全くもって無かった。


てことは……ごくたま〜に、ほんとにまれに、人目を盗んでちょこっとイチャついてたところを見られたのかな。


……ぐおおおおおおおおおお。
それはダメでしょ猛反省しなきゃだわ。
もうこれから先、カメ男と社内では仕事以外の話をするのは厳禁!
1ミリも触れてはいけない!
目も合わせてはいけない!
バレてはいけない!
バレたら異動なんだからああああああああああ……。


春の異動に私たちのどっちかの名前が載った辞令の紙が掲示板に貼られるのだけは、絶対に避けたいところだ。