「ちょっと!大野さん聞いてる!?」
優くんと会話していたとばかり思っていた久住が私にグイッと顔を近づけてきて、彼らについて妄想していたのが急に現実に引き戻された。
「はい?なんか言ってた?」
「あなた集中力散漫ね!よく言われない?」
「あー……、たまに言われる……」
そこで我関せずって顔をしているカメ男にね。
久住は私をジロッと睨みつけると、腕を組んでやれやれと深いため息をつくのだった。
「あなたに質問していたのよ!社内恋愛についてどう思うか!」
「しゃ、社内恋愛について?」
ちょっと違うことを考えている間になんという話題になってたんだ!
だいぶ動揺しながら久住に苦笑いを返す。
「うちの会社ってけっこう社内恋愛多いらしいからね、いいと思うけど……」
「私はあまり気が進まないのよ!会社はあくまで働くところよ!別に恋人を探しに来ている訳では無いでしょ?」
久住はもっともらしいことを言い捨てると、私に向けていた視線を優くんへ移す。
その視線は刺すような、鋭いものだった。
「あなた、私に好意を持ってくれてるみたいだけど!結婚の意思があるなら考えてあげてもいいわよ?」
優くんは驚いて目を真ん丸にして息を飲むのが見えた。
喉仏が上下していたから。
久住の迫力に押されているんだろう。
無理もない。
結婚を前提になら前向きに検討するということだ。
そんな重い話、ありえないでしょ……普通。
やっぱり久住は凄い女だ。色んな意味で。



