「颯人(はやと)、ありがと」
そう言って、
胸のなかにいたここが、スッと俺からはなれる。
その瞬間、俺とここのあいだに、
ほんのすこしあいた窓から入るつめたい風が、
ヒュッ……と吹きぬけていく。
まだ、泣きたりないことは知っている。
でも、あえてそれを口にださない。
「さむっ!まだはなれんなよ……」
ぶるっとからだを震わせて、
わざとさむい演技をして、
ここの腕を俺のほうへひっぱる。
ここの黒色のロングの髪は、
くしでといていないせいなのか
ボサっとしている。
その髪をポンポンとやさしくなでて、
そっとだきしめる。
それと同時に、またここが涙をながす。
「うぅっ……爽(そう)……っ」