ミカさんはあたしを可愛がってくれるだけの人じゃない。あたしのためにモデルの仕事を考えてくれている。

「玲奈は戦友だからね。オーディションに着ていく服がないなら、試作だっていくらでもあるわ。ウオーキング、大丈夫よね」

「レッスンを受けてましたから。でもちょっと自信ないです…」

モデルは、簡単になれるものではないということは自分でもよくわかっている。ピンクラビッツに拾って貰って、きちんとしたレッスンを受けて初めてモデルの大変さを知った。

オーディション会場には、お洒落な子しかいないんだから。全身ブランドでも、可愛く着こなしていてセンスがある。

「じゃあレッスン入れておいて。身長が足らないから、ショーモデルは無理としても、コマーシャルのプロモーションをして貰うといいわ。コンポジットの内容も確認して」

コンポジットは業界用語で、主にモデルや芸能人のプロフィールのことをいう。顔と全身の写真、名前、身長、スリーサイズ、靴のサイズ、所属事務所、連絡先などを記載する。

このコンポジットで事務所はプロモーションをしてくれる。オーディションの一次審査はこれにかかっているので、気合いを入れてプロのカメラマンにお願いしたりする。

二次審査が面接で、ウオーキングを見たりする。 

「さあ、やるわよ覚悟はいいわね? 」

そう言ったミカさんは力強く、あたしもはいっと頷いた。