「は?」


何を言ってるんだ、こいつは。


じゃーんと勿体ぶりながら、美雨はモコモコしたパーカーの腹の辺りにあるカンガルーポケットから、DVDを取り出した。


「地下のシアタールームで、映画鑑賞しようよ!」


あぁ、そういう事か。


お兄は子供の頃から、いつか自分の家を持ったら、天体観測が出来る屋根裏部屋と、ルームシアターが欲しいと言っていた。


輸入家具店を営むやり手の女社長の晴美さんという、言い方は悪いが最強のパトロンを得て、お兄は早々に両方の部屋を持つ夢を叶えたのだ。


引っ越し当初、いつかはルームシアターにするための防音装備を備えた地下室は、ただのだだっ広い空間だった。


イメージで言うならば、ジムのスタジオと言った所だろうか?


この半年の間に、あれよこれよと機器を買い込み、今はVIPさながらのゆったりとしたソファ席のあるミニシアターになっている。


ルームシアターが完成してから、お兄は、毎晩のようにシアタールームに籠っていた。


毎日明け方まで、映画を観ているらしい。